第6章特殊法人「商工会議所法」に基づく新・商工会議所に再改組
~新しい経済社会発展のリーダーとして~〔昭和28年8月1日法律第143号公布・同年10月1日施行〕
終戦後、米軍当局の指令によって改編された商工会議所は、任意加入の会員制度を根幹とするもので、我が国商工会議所の多年の伝統、あるいは、我が国経済の実情に根ざしたものでなかっただけに、その根本的解決のためには、会議所の体制そのものに深いメスを加える必要に迫られた。
国内的理由として、商工会議所が地域総合経済団体としての機能を発揮できる体制でなければならず、この役割を果たし得るためには、我が国商工会議所多年の伝統である強固な法的基礎に立つことが必要とされた。
国際的理由として、広く外国商工会議所との連係を緊密にして、友好親善と貿易拡大、経済協力の推進を図り、世界の繁栄と平和とに貢献できる体制とすることが必要とされたからであった。
「商工会議所法」根本改正の問題は、具体的には昭和27年1月以来、全国商工会議所の世論として、「商工会議所法改正問題に関する要望書」が決定され、国会及び政府当局に提出されたのが最初の動きで、こうした新法の制度が官民各方面において慎重に研究された結果、条文では第1章で総則、第2章で商工会議所、第3章で日本商工会議所について規定し、戦前の公法人的な商工会議所の組織の伝統を新時代の息吹きのなかで生かし、新しい幾多の改正を折込んだ戦後2度目の特殊法人「商工会議所法」を制定し、昭和28年8月1日、法律第143号をもって公布、同年10月1日施行された。
この法律に基づく新制度の大きな特徴は、次の通りであった。
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地域総合経済団体としての性格の付与
商工会議所を特殊法人(第2条)とし、その公益性、特に総合経済団体としての性格を明らかにしたことである。新商工会議所の構成は、会員制度を基礎としているが(第15条、第16条)、それは純然たる会員組織ではなく、したがって会員のみの利益擁護機関ではない。他方において、議員制度の長所を採り入れ、一定規模の商工業者は会員でなくとも、これを特定商工業者として(第7条)、議員の選挙権を有しめることにより(第41条第2項)、広く地域商工業者の共同社会全般の利益を図る体制とし、地域総合経済団体としての性格をもたせた。いわば会員制度と議員制度の長所を結合した折衷制度であり、世界における商工会議所制度の一つの新体制を打ち立てたものであった。
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会議所設立及び組織変更の法定
会議所の本質とその使命にかんがみその強化を図るため、①定款及び事業計画の内容が法令に違反しないことはもとより、その設立がその地域の商工業の振興に寄与するものであること、②その事業を実施するために必要な経済的基礎、施設及び役職員を有することなど、会議所の設立の際の認可要件を法定した。
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組織の強化
会議所に議員総会(第41条第12項)、常議員会(第5条第12項)を置き、また部会(第54条第1項)を置くことを法定し、その組織の強化が図られた。
すなわち、社団法人「商工会議所法」では、会員総会が最高意志決定機関であったものを、新法では、議員総会をもってそれに替え能率的、かつ実効的な選挙を行えるよう体制を確立した。 -
事業の拡張
特定商工業者を登録した商工業者法定台帳の作成管理及び運用(第10条第11条)を会議所の事業として義務付けた。
また会議所に対し、昭和35年5月20日、法律第89号公布、6月9日施行の「商工会の組織等に関する法律」に基づき、経営改善普及事業の一環として、会員非会員を問わず地区内小規模事業者に対し、経営指導を行うことを義務付けた。 -
財政の強化
会議所の公共性にかんがみその財政的基礎を強化する一助として、登録税、所得税、法人税、地方税の全部、又は一部について非課税法人とする措置(附則19、20,21、22)が講ぜられた。また、商工業者法定台帳の作成管理及び運用に要する経費は、特定商工業者から納付される負担金をもって当てることとした。
以上のような特徴をもった現行商工会議所法によって、戦後社団法人として設立された商工会議所は、法定された要件にしたがって改めて認可を受け直し、新しい特殊法人商工会議所に改編され、その後も商工会議所は数多く新設された。
北海道においても、この特殊法人「商工会議所法」に基づく商工会議所として、昭和29年6月赤平を始めとして、留辺蘂、千歳、登別が順次設立され、全国的にも、その数は増加の一途を辿り、平成8年8月末日現在、全国商工会議所の数は515に達している。
また、この新法に基づいて、「日本商工会議所」は昭和29年6月26日、「北海道商工会議所連合会」は昭和33年5月2日夫々改組した。