第5章戦後社団法人商工会議所として再編
~商工会議所の再建と産業経済の復興を目指して~
戦後の社団法人組織の商工会議所時代を、前期と後期に分けることができる。
前期は、商工経済会解体のあと、「民法第34条」に基づく社団法人組織により設立された新商工会議所から、昭和25年5月、法律第215号をもって公布、施行の社団法人「商工会議所法」の制定までであり、後期は、この後、昭和28年8月、法律第143号をもって公布の特殊法人「商工会議所法」施行の昭和28年10月までの期間である。
前期は、戦後のインフレ高進期であり、低迷と混乱が続いたが、後期は、デフレ期に始まり、漸次積極政策に移行する期間であったといえる。
5-1「民法第34条」に基づく社団法人商工会議所として〔明治29年4月27日法律等89号公布〕
終戦を契機として民主主義、自由主義の思想が膨淋として復活し、政治、経済、社会、文化の各分野にわたり、史上未曽有の大変転が行われるに至った。
全国各地の商工業者もこの新情勢に対応して、民主的、自由主義的な商工業者の総合経済団体を再建すべく努力の結果、とりあえず、「民法第34条(公益法人の設立)」に基づく社団法人組織による再生商工会議所の設立に立ち上った。
この民主的再編は、多年我が国で築きあげてきた議員組織選挙制度の公法団体としての仏独系統商工会議所の長所と、任意会員組織の私法団体である英米系統商工会議所の優れた点を、いかにして調和させるかがキーポイントとされた。
徹底的な民主主義体制を布くには不安と躊躇が感ぜられ、勢い英米系統の会員組織、任意団体としての商工会議所を究極の目標としながら、それに達する中間段階的な法的商工会議所の構想に落着かざるを得なかった。
この社団法人としての再生商工会議所は、加入脱退の自由な任意会員組織に立ち、自主独立の運営の線を貫くものであり、その経費は会員が強制によらないで拠出する会費を基本とすることが最大の特徴であった。
また、商工会議所の定款は地域の実情によって一様ではなかったが、商工会議所の第1条目的については「会議所は地区内における商工業及び団体相互の連絡を密ならしめ、商工業各界の公正世論を代表し、総合的に商工業の改善発達を図り、もって我が国経済の民主的発展に寄与することを目的とする」と規定した。
まさに、歴史は再び振出しに戻った感が深い。その後、自主的民間団体としての商工会議所の組織運営などの基準を示し、指導したことから、全国各地に新商工会議所が続々と設立されるに至り、昭和22年末には全国242 会議所に達した。
この間、全国組織の必要も痛感され、昭和21年12月7日社団法人「日本商工会議所」が発足した。
北海道においても、この民法上の社団法人商工会議所として、昭和21年11月岩見沢を皮切りに留萌、網走、滝川、紋別、根室、深川、稚内、苫小牧、遠軽、栗山、美唄など12ケ所に続々と新商工会議所が設立した。
社団法人「北海道商工会議所」の創立
この時期に、道内都市商工会議所の連合会的な役割に止まらず、全道を地区とする商工団体、商工業者の全道的総合団体として、昭和22年3月10日社団法人「北海道商工会議所」が発足した。
この社団法人「北海道商工会議所」の誕生が現在の一般社団法人「北海道商工会議所連合会」の法的ルーツとなるもので「70年超の歩み」はここから始まっている。
5-2 社団法人「商工会議所法」に基づく商工会議所として〔昭和25年5月31日法律第215 号公布・施行〕
戦後の自由主義、民主主義の風潮に乗って、「民法第34条」に基づく社団法人組織の商工会議所は、全国各地に続々設立されたが、反面、このなかには組織の基礎が脆弱で商工会議所としての実態を有しないもの、特定人の利益を図ったり、政争の具に供せられて、商工会議所としての本来の目的を逸脱するものなども現われ、そのため益々財政維持難に陥るものも少なくなく、商工会議所制度発達の前途に一抹の暗影が感ぜられた。
これらを背景に、会議所に一本の筋を通し、基礎薄弱なものは育成することなどを目標に社団法人「商工会議所法」を制定し、昭和25年5月31日、法律第215号をもって公布、施行し、商工会議所の組織の基準と活動の原則などを規定し、戦後の新生商工会議所の健全な発展の指針とした。
この法律は、極めて簡単なもので、全部でわずか8カ条で、社団法人「商工会議所法」の構成の主要点は、次の通りであった。
- ①商工会議所の目的を「商工業の改善発達」にあわせて「福祉と繁栄を増進すること」とし、社会福祉の増進をも目的とすることを法律で初めて示した。
- ②商工会議所の具備要件として会員の任意加入、脱退、商工会議所名称の使用制限、また、特定会員の利益、特定政党の利用を禁止する規定を設け、名称制限規定には罰則を設けた。
- ③商工会議所の地区を指定し、また、第5条で商工会議所が連合して全国又は各都道府県ごとに商工会議所を設立することを認めた。
- ④商工会議所の運営についでは、最高意志決定機関は会員総会で、議員総会は会員総会の委任事項の審議機関とし、会頭以下の役員は民法上の理事また監事とすることとした。
この商工会議所は「民法第34条」に基づく公益法人であるけれどその公益性にかんがみ、この法律に基づいて規制されるものであることを明示することにより商工会議所の地位を高めるに大いに寄与した。この社団法人「商工会議所法」の公布、施行に伴ない、その後の商工会議所の自由な再建、新設を許し、その数は空前の盛況を示し、全国301の商工会議所が再出発した。北海道においても、この社団法人「商工会議所法」に基づく会議所として、昭和25年11月伊達を皮切りに砂川、森、士別、富良野、名寄、江別、倶知安、岩内、余市、芦別、上砂川、夕張、浦河、美幌、歌志内の16カ所に続々と新生商工会議所が設立した。
なお、「日本商工会議所」も同法に基づき改組し、新生日本商工会議所として再出発し、また各都道府県連合会も相次いで設立されるに至った。
社団法人「北海道商工会議所連合会」に改組
昭和22年3月10日「民法第34条」に基づき発足した社団法人「北海道商工会議所」は、社団法人「商工会議所法」第5条の規定に基づき改組し、昭和25年11月定款変更、昭和26年10月名称変更の認可を受け、社団法人「北海道商工会議所連合会」と呼称した。また、公益法人制度改革により、民法34条は廃止され、公益法人改革法が平成20年12月1日から施工されたことにより平成25年4月1日より一般社団法人北海道商工会議所連合会に変更し、今日に至っているものである。