北海道商工会議所連合会
会 頭  岩 田 圭 剛



 令和6年の新春を迎えるにあたり、謹んでお慶び申し上げます。

 皆様におかれましては、日頃から道商連の事業活動に多大なるご支援・ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

 昨年は、ワールド・ベースボール・クラシックで、栗山英樹監督率いる侍ジャパンが3大会ぶり3度目の優勝を果たし、大谷翔平選手はメジャーリーグで日本選手初のホームラン王とリーグ史上初めて満票で2回目のMVPを獲得、また、旭川市出身の陸上女子やり投げのエース・北口榛花選手も世界選手権で日本選手初の金メダルを獲得するなど、日本人の活躍が世界の注目を集め、私たちに希望を与えた年でありました。
 そのような中、2030年北海道・札幌冬季オリンピック・パラリンピックの誘致断念は、経済界一丸となって招致に取り組んできた立場としては、率直に悔しい思いでありました。

 さて、3年にわたり猛威を振るったコロナですが、昨年5月のコロナ5類移行を契機に、インバウンドを含めた旅行客がコロナ前の9割の水準まで回復するなど、社会経済活動は正常化に向け着実に歩みを加速して参りました。
 一方で、企業を取り巻く環境は、円安やエネルギー・原材料価格の高騰によって収益が圧迫される中、人手不足に加え、賃上げ圧力に晒されるなど、大きな課題に直面しております。

 商工会議所は、デフレ経済脱却という時代の転換点にある今、これら課題を克服し、力強く地域再生・発展への歩みを進めていかなければなりません。

 まずは、北海道の基幹産業であり成長産業でもある「食」と「観光」の再生であります。
 北海道の食産業は、ロシアのウクライナ侵略などを契機にさらに重要性が増し、「食料安全保障」に貢献する大事な産業であります。スマート農林水産業や製造・流通も含めたブランディングの高度化により、生産性や競争力を高め、魅力ある産業にしていかなければなりません。
 観光につきましては、昨年9月に開催された「アドベンチャートラベル・ワールドサミット」により、北海道の魅力が欧米を中心に広く世界に発信されました。このチャンスを逃すことなく、今まで十分に取り込めていなかった地域や旅行者を取り込み、コロナ禍からの回復、成長への足取りを加速させていかなければなりません。

 あわせて、食・観光に加えて北海道のポテンシャルを活かした新たな成長産業を育て上げていくことが必要であります。
2点申し上げたいと思います。
 1つ目は、次世代半導体製造のラピダス社の進出に伴う関連産業の立地・集積であります。
 ラピダス社は、2025年の試作ライン稼働、2027年の量産化に向け、準備が着々と進められております。
 北海道新産業創造機構の試算では、その経済波及効果は14年間で最大18.8兆円にのぼり、観光産業の経済波及効果に匹敵する規模と言われております。

 2つ目は、再生可能エネルギー、GX(グリーン・トランスフォーメーション)投資であります。
 政府の骨太方針2023では、GX投資の加速として、今後10年間で150兆円の官民投資を実現すると明記され、全国随一の再生エネルギー・ポテンシャルを有している北海道は、このうち30〜40兆円の投資を呼び込み、日本の再生可能エネルギー供給基地、そして、GXに関する資金・人材・情報の集積地となるべく、昨年6月には、産学官金が連携したコンソーシアム「Team Sapporo-Hokkaido」を立ち上げ、精力的に活動を展開しています。

 これらは共に、わが国の「経済安全保障」、「エネルギー安全保障」を支える重要な国家プロジェクトとして、かつて経験したことのないスピード感、桁違いの投資額で進められているものであり、北海道を飛躍的に発展させる大きな力を持っております。
 このフォローの風を地域がしっかりと受け止め、地元企業の参入機会を創出し、投資や人材育成にもつなげ、その恩恵を実感できる形で、北海道経済をより強固な産業構造へ転換させるエネルギーにしていきたいと考えております。

 その実現に向けては、それぞれのプロジェクトの進捗スピードに合わせた社会資本整備も不可欠であり、人流・物流を支える北海道新幹線の札幌延伸やアクセス道路をはじめとする交通インフラ整備の計画通りの完成に加え、物流・運送業界を取り巻く2024年問題へも取り組んで参ります。

 以上、新年を迎えるにあたり所感の一端を申し述べました。
 地域唯一の総合経済団体である商工会議所は、地域の第一線で活躍する会員企業の皆さまとともに、刻々と変貌する社会経済環境をタイムリーに察知し、スピード感を持って事に当たらねばなりません。
 全道42商工会議所と力を合わせ、「ビヨンドコロナは北海道の時代」であることを実感して頂けるよう新時代を切り拓いて参ります。

 結びに、本年が皆様にとって実り多い素晴らしい一年となりますよう、心からお祈り 申し上げ、新年のご挨拶とさせて頂きます。